アメリカからの便り
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アメリカの医療改革2012年
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6月28日、画期的な判決が米連邦最高裁で下されました。
オバマ米政権の医療保険改革法(通称オバマケア)が合憲との判決でした。
私はホッと胸を撫でおろしました。
そもそもなぜこの法案の憲法妥当性が裁判にかけられるのか不思議です。
日本的な感覚からすると、全国民が医療保険をもつことは義務教育のように当たり前で、保険の有無で受診
できなかったり、薬剤費を払えないという状態は違和感があります。  
ところが一部のアメリカ人によると、医療保険の加入は各自の自由であり、国が保険を「強制」するということに非常な抵抗感があるようです。個人の自由を重んじる国だからこのような考えがあるのは分かるのですが、
ちょっといきすぎているような。。。
病気になってから健康のありがたみが分かるように、病気になってから保険のありがたみが分かります。
医療費の高騰が著しいアメリカでは、無保険のままで入院や手術をうけるのは、自己破産することと同様です。 例えば、私の3月の出産に関しては、2泊の母子同室の入院で合計50万円でした(これには婦人科と小児科の診察、ラクテーション・コンサルタントの利用、採血、肺機能検査、聴力検査が含まれています)。私たちは職場を通して医療保険に加入しているので、実際の負担額は一割程度ですが。
また、表立っていない点ですが、今までアメリカでは、既往症があると医療保険に個人的に加入できない仕組みが一般的でした。例えば自分が50代で糖尿病であったとします、最近解雇されたので個人的に医療保険に加入するしかありません。それがこの法案が通るまではほぼ不可能なことだったのです。つまり、今後、手術や入院が必要になった場合、すべて自己負担となるのです。この法案の成立で、既往を理由に保険会社が加入拒否できなくなったわけです。アメリカの無保険者は3,000万人と言われていますが、この中には加入したくても加入出来ない人も含まれているわけです。
オバマ大統領が当選してから4年、やっとオバマケアがスタートラインに立ちました。まだまだイバラの道が待っていると思いますが、安心して医療サービスを受けることのできるアメリカになってくれるのを諦めずに期待していきたいです。
----------  関連サイト  ------------------------------------------------------------------
アメリカ看護協会のホームページ
なぜ看護協会が国民皆保険を長年支持してきたのか、この法案がどのように看護師、一般市民に影響を
あたえるのか分かりやすく説明されています。
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プロフィール
喜吉テオ 紘子 (看護師、保健師)
現在、ミシガン大学の看護学部に臨床助教として勤務。
(株)メディカル・ コンシェルジュのアドバイザリー・ナースとしても活躍中。
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