奨学金のこと
大学院への進学を決めたとき、教育は自分への投資だと考えていました。
私はラッキーなことに大学院の時に初めて自分の貯金を教育にあてました。
社会人として勉強をするということは、仕事をする時間が減ってしまうため、雇用体系また雇用内容が制限されてしまいます。つまり、収入があったとしても減ってしまうことが多いです。メディカル・コンシェルジュの登録ナースの方々の中にも、大学・大学院に在籍しながら、空いた時間でお仕事をしている方も多いのではないでしょうか?時間の自由が利く仕事の存在は、本当にありがたいです。
私も今でも週に1度程度、UCSF大学病院の研究病棟で働いています。(今、研究病棟における被験者の数は少なくなりつつあって、以前に増して外科・内科・産科!・小児科!の患者さんが増えています)。週に1度の仕事だけでも生活していけるのは、奨学金のおかげです。修士課程の留学時は、「平和中島財団日本人奨学生」として、そして博士課程は「カルフォルニア大学大学院奨学生」として教育費を補ってきました。
日本で留学の準備をしていた際、奨学金制度を探すのに非常に苦労しました。2003年ごろ、アメリカ看護修士課程の留学を対象とする奨学金制度は10に満たない程度でした。アメリカに来て、本当に驚いたことは、奨学金の制度が非常に整っていることです。金額は様々で(5、6万円から年間200万円相当など)、卒業後に教員になるなどの制約があるもののありますが、多くは返済義務がありません。日本と違って、収入や家庭的事情を理由とした奨学金よりも、学術的評価から授与されるものが豊富です。現在、UCSFから数ヶ月ごとに2−3ページの奨学金案内が届きます。大学院としても奨学生が多いほど、優秀な生徒がいることになるので積極的です。
年度末にアメリカの国立奨学金制度に応募してみたのですが(結果はまだ分かりません)、援助団体の優先課題が奨学生の選択に多く影響することを学んでいます。国立看護研究所(National Institute of Nursing Research)において、ホットな課題は急性期看護、終末期医療、症状管理(疼痛、嘔吐等)、生物マーカー、遺伝子、生物行動科学などです。私が今、興味をもっている「院内感染予防ガイドラインの利用防御因子」は、これらのカテゴリーに入りづらく、現状況では奨学生になるのは難しいことを実感しています(次のストラテジーを考え中)。
科学の進歩も社会の影響を受けるものなのです。考えてみれば、HIV・AIDSの研究や治療が進歩したのは、科学の進歩があったのはもちろんですが、それをサポートする団体や個人、特にHIVの場合は有名人の関心があり、一般社会の意識改革があってからこそ、このようなスケールでの進歩があったのだと思います。
日本ではまだ奨学金制度は少ないですが、様々な教育や研究を応援する仕組みがととのってくれればと思っています。