アメリカからの便り
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2つのジャーナル・クラブ
皆さんは、ジャーナル・クラブ(Journal Club)のことをご存知ですか?
ジャーナルとは一般的に定期的に発行される研究雑誌のことを指します。
ジャーナル・クラブでは数人から数十人が集まり、特定の研究文献についてディスカッションをするのです。研究有志会みたいなものでしょうか?
私は、好奇心旺盛な性格から研究の魅力に取り付かれ、今は博士課程に在籍しています。ジャーナル・クラブは学問の世界と臨床を結ぶいい機会と考え、今では2つのジャーナル・クラブをはじめるまでに至りました。
1つは、私が働く病棟のナースを対象としてます。名も「12階病棟ジャーナル・クラブ」。この病棟の専門は臨床研究で、働くナース達も研究に興味があるのに関わらず、研究について掘り下げて学ぶ機会が少ないこと、また機会はあってもそれは講義であったり、参加的でないことを残念に思ったことがきっかけとなりました。
第1回目は参加者が3名と心細く始まりましたが、2回目は病院外へ場所を変えたのもよかったのか10名も参加がありました!私はファシリテーターとして、文献を探したり、ディスカッションの進行役を努めています。トピックはその回の代表者が決めることにしています。面白いことに、病棟で行われて臨床研究よりも看護業務に関連することが今のところ課題となっています。これまでの研究文献は、「毎時巡視(Hourly Rounding)」と「看護師の思考的作業における中断と距離的な挑戦(Interruptions and Geographic Challenges to Nurses’ Cognitive Workload)」。次回は年配ナースからの提案で看護におけるジェネレーション・ギャップ。この病棟では断然に年少グループに入る私としては「何か問題でも??」という感じなのですが、さあどうなることでしょう。
2つめの「学際的(Intra-school)ジャーナル・クラブ」はUCSF大学院のものです。学際的な学びへの共感のもと、創設に関わりました。ここでは、薬学、歯学、医学、看護学の学生が集まり、研究についてのディスカッションの場を学生に提供しています。このジャーナル・クラブの参加を通して、他の学部がどのようにして臨床研究について学んでいるのかを知るいい機会になり、また研究が共通言語であるのをうれしく感じています。また、それぞれの専門からの観点や情報の交流はとても刺激になります。
このジャーナル・クラブでは、全ての学部が興味をもつテーマを探すのが意外と大変でした。第1回目は、血中のコレステロール低下に効果のあるスタチン剤の研究について。歯学部を意識して歯周病を持つ患者さんを症例に挙げました。第2回目は、全米で話題になった乳がんスクリーニングのガイドラインの変更についてです(主な変更は乳がん検診開始の年齢が上がったことです)。このガイドラインの変更がニュースとなって世間に流れた時は、学者、臨床家、乳がん経験者、保険会社などから熱い議論が行われました。さて今回はどのようにディスカッションが展開するのか楽しみです!

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プロフィール
喜吉 紘子 (看護師、保健師)
1977年10月生れ、10〜14歳までをアメリカで過ごす。
聖路加看護大学を卒業の後、およそ3年間虎の門病院に勤務。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)大学院にて修士号取得(看護管理学)。
現在、UCSF大学病院・治験病棟にて臨床看護師を務める傍ら、病院の看護研究/教育部の助手として も関わりを持つ。
今後の時代を睨み(株)メディカル・ コンシェルジュのアドバイザリー・ナースとしても活躍中である。

「アメリカからの便り」
開設にあたって・・・

この度『アメリカからの便り』を開設するにあたって、病棟勤務、看護研究、翻訳業務などにて多忙を極める喜吉紘子さんに快くご協力頂きましたことを感謝いたします。
医療・看護に携わる全国の医療従事者の皆様方に向けて、今後の参考と励ましになれば嬉しく思います。

※ このサイトは月1回のペースにて書き換えをいたします。
尚、喜吉紘子さんは2007年9月よりUCSFの博士課程に進学致しました。
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